2018/06/16 梅雨早朝 未知との遭遇

焚火台を試す会の集合よりもかなり早くにアダチは長岡から新潟市に入って自主練しようと思っていた。

「天気悪いじゃーん」
結局7:00過ぎには雨があがり、天気は好転したが、この時は
「せっかく早起きして来たのに~楽しみにしていたのに~」という気持ちで少しブルーだった。

たどり着いた公園は橋の下が駐車場になっており、雨を凌げる環境があった。
仲間と合流するまでアダチはそこで自主練する事にした。

すると、見知らぬおじいさんが声をかけてきた。
「上手らねっけ、皿回し」
「あぁ、ありがとうございます。」
おじいさんは左肩に細長い棒状の物が入っていそうなソフトケースを背負っていたので、釣り人だと思った。
実際、駐車場には釣り竿を持った人をさっき見かけたので。

「皿回しなら俺もできんれ?貸してみた?」
おじいさんは笑顔でアダチのフリスビーを手に取った。

「うおぉ!すごい!」
おじいさんは中指の先でフリスビーの中心を追いかけながらくるくると回した。
フリースタイルフリスビーでは実は指先は使わない。爪を使うのだ。
おじいさんの技はフリスタのそれとは異なっており、それこそ皿回しのコツなのだろう。
アダチは素直に感動した。

聞けばおじいさんは昔ウェイターをやっていた事があり、お盆を使って覚えた技をお客に披露してみせていたらしい。
それもすごい。

話に一旦オチがつき、自主練に戻ろうとしたら更におじいさんは背負っていたソフトケースを取り出し言う。
「これなんらと思う?」
「釣り竿じゃないんですか?」

尺八だった。
ホームセンターで買った水道管でおじいさんが自作した笛である。
よく見ると反り返っており、ストーブで温めて曲げたりしたのだとの事だ。


6月雨降りの早朝。
橋の下で見知らぬおじいさんの水道管尺八の音色が響く。

後でわかった事だが、晴れている日は20万円くらいの本物の尺八を持って来ているらしい。
雨の日は尺八にダメージがあるので水道管尺八なのだ。
雨の日でよかった。とアダチは思った。

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